八重歯は「幼さ」や「小悪魔的なイメージ」もあり、日本では比較的かわいらしいものとして受け止められる傾向があります。しかしながら、噛むという機能や生涯的な口腔環境を踏まえると、やはり早めに治療した方が良いというのが医学的な見解です。どうして早めに治療しておいたほうが良いのか、生涯的な口腔環境や咀嚼機能を踏まえてご説明いたします。
目次
八重歯を放置することで生じる4つの悪影響!
八重歯は、真正面から歯を左右に分けたときに3番目にある犬歯に起こる不正歯列です。乳歯から永久歯に代わる際、犬歯は他の歯よりも遅く生え変わるという特徴があります。この関係で顎骨の成長が不十分な場合、後から出てくる犬歯のためのスペースが確保できず八重歯になってしまうのです。
犬歯は噛むという機能上非常に大切な歯になりますので、ここの歯並びが乱れていると噛み合わせに問題が起こり、様々な悪影響が考えられます
1.虫歯や歯周病リスクを高める
八重歯があると歯並びに大きな凸凹が残りやすく、歯磨きがしにくくなるという問題があります。特に前から3番目の犬歯は前歯と奥歯の境目に位置し、元々歯の緩やかな湾曲に対してブラッシングで力を加えにくいという特徴があります。ここに凸凹があるということは、歯と歯の隙間や歯茎の溝にブラシが届きにくくなることを意味し、虫歯や歯周病リスクを極端に高めることになってしまうのです。
日本ではチャームポイントとして評価されがちな向きもありますが、生涯的な口腔環境を考えると放置しておくことは好ましくありません。また八重歯が「かわいらしい」と評価されるのは一般的に20代くらいまでという見解もあり、大人になってくると口元を見せづらくなるという側面もあります。
2.口内炎を招きやすい
八重歯は歯の本来的な緩やかなカーブから外にズレて生えていることが多く、お食事などで咀嚼する際に唇内側の粘膜を傷つけやすいという特徴があります。誤って噛んでしまうことで細菌が入り込み、この周辺で口内炎になってしまうことも少なくありません。 これは歯並びの構造上の問題として明確に指摘できるものです。つまり、本人が気を付けてお食事をしていても適切に治療しない限りこの種のトラブルは持続してしまいます
3.知覚過敏リスクもある
犬歯は前歯と奥歯の境界線部分に位置し、歯根が全ての歯の中で最も長いという特徴があります。食べ物を噛み切るための牙のような役割を担っており、噛む機能上確かな強度を持たせておく必要があるのです。また、上下の歯を噛み合わせたときに真っ先にここにぶつかることで噛み合わせの起点をなしているという特徴もあります。
このようなことから、犬歯は食べ物を咀嚼する際に「犬歯誘導咬合」という重要な役割を担うことになります。噛み合わせて顎が細かく横に動いたときに、歯全体で横の負担が過度に生じないよう受け止める機能を果たしています。奥歯は縦に加わる力には強くても横から加わるものには弱いため、このような噛み合わせの誘導バランスを犬歯が担うことが重要になってきます。
犬歯の噛み合わせが悪いということは、上述のような役割が適切にこなせないということになり、本来回避されるべき負荷が他の歯にも伝わってしまうことを意味します。この影響で歯が欠けやすくなってしまったり、奥歯が割れた結果「知覚過敏」をもたらしてしまうこともあります。
4.口が閉じにくく、口呼吸から口臭への影響も…!?
八重歯の突出具合にもよりますが、八重歯のない人と比較するとやはり口が閉じにくくなる影響が考えられます。この関係で相対的に「口呼吸」になってしまうケースが多いと判断できます。 口呼吸は唾液を減らし口腔内を乾燥させてしまうため、お口の中の細菌の繁殖に繋がります。
これは先にご紹介した「虫歯や歯周病のなりやすさ」を強化してしまい、八重歯周辺以外のお口環境全体にも波及します。また、お口の中に細菌が増えるということは「口臭が臭いやすくなること」にも繋がります。
歯列矯正で正しい位置に八重歯を誘導しよう!
当コラムでは八重歯を放置した場合に起こりやすいトラブルやリスクについてご紹介しました。一見チャーミングだと評価されがちな八重歯ですが、噛み合わせという点では大きな問題があることがわかったと思います。八重歯の治療法としては次のような矯正治療が考えられます。
八重歯で選択される矯正治療r
● ブラケット矯正
最も一般的な歯列矯正法です。金属のワイヤーや金具が気になるという声が多いですが、近年では目立たないワイヤーを使うものや歯の裏側に金具を装着する方法もございます。
● インプラント矯正
八重歯移動の際には確保するスペースが足りない場合も少なくありません。小さなインプラント(アンカースクリュー)を一時的に顎骨に埋め込み、ここを起点にすることで大きく歯を動かせるのがインプラント矯正です。八重歯を矯正する際にブラケット矯正と併用することも多いです。
特別大掛かりなオペは必要なく、矯正治療後は埋め込んだインプラントを取り外しますので、顎骨への負担なども心配ありません。
● マウスピース矯正
患者さまの歯型を元にコンピュータシミュレーションによって作成した連続したマウスピースを用いる治療法です。見た目の違和感がないため若者を中心に人気のある矯正治療法となっています。ただし、特に八重歯を矯正する際には八重歯の吐出具合によってはマウスピース矯正が選択できないこともあります。
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犬歯は「最も寿命の長い歯」とも言われており、この箇所で虫歯や歯周病になってしまうことは絶対に避けるべきだと言えるでしょう。噛み合わせのバランスを担う最も重要な歯になりますので、生涯的においしく食事をする際の礎をなす歯が犬歯なのです。
八重歯はここに生じる不正歯列なので、機能性を考えると「かわいらしい」と微笑んでいられるものでもありません…。歯列矯正でスペースを作り適切に誘導していくことが可能ですので、ぜひ前向きに矯正治療をお考えください。