2020.10.19 成人矯正
すきっ歯の原因とリスク 矯正による改善方法
歯と歯の間に隙間ができてしまう「すきっ歯」については、ご本人さまは非常に気にされていると思います。専門的には「空隙歯列(くうげきしれつ)」と呼ばれるもので、特に前歯に起こる場合が多いのではないでしょうか。原因やリスク、治療法についてご紹介しますので、ぜひ参考になさってください。
すきっ歯の原因とリスク
すきっ歯は専門的には「空隙歯列(くうげきしれつ)」と呼び、歯と歯が詰まって凸凹としてしまう「叢生(そうせい)」とは正反対の不正歯列です。つまり、顎骨が狭く歯が窮屈になっているのではなく、スペースが余っていることで歯と歯の間に空白ができてしまっている状態です。
原因としては、先天的な遺伝のほかに、後天的な習慣やお口の中のトラブルなどが考えられます。
すきっ歯をもたらす「先天的要因」
●もともと歯が小さい/顎が大きい
歯が生まれつき小さいケースでは歯の間に空間ができやすくなります。あるいは、逆に顎が歯に対して大きいケースでもすきっ歯になりやすいです。
●生えてきていない歯の存在
28本の歯のうち、一部生えてきていない歯がある場合、その箇所の前後や左右で隙間ができてしまいます。歯が歯茎の中に隠れた状態にあるケースもあります。
●上唇小帯の異常
上唇の内側と歯の間には「上唇小帯(じょうしんしょうたい)」と呼ばれるヒダのような筋があり、通常よりもこの箇所が発達していると上前歯の正面に隙間ができやすくなります。
すきっ歯をもたらす「後天的要因」
遺伝的に問題がなくても、成長過程における習慣や癖、生活していく中で生じたお口トラブルなどによって後天的に「すきっ歯」になってしまうこともあります。
●指しゃぶり/爪を噛む癖/舌癖
指しゃぶりは、3歳くらいまでに卒業していくのが一般的です。いつまでも指しゃぶりを続けていると、指を吸っているときに歯が内側から外側に引っ張られる時間が長くなり、すきっ歯などの不正歯列に繋がりやすいです。爪を噛む癖や、舌を前歯に押し付ける癖がある場合も同様です。
●歯周病
年齢を重ねることで歯周病が進行していくケースでも徐々に歯と歯の間に隙間ができるようになっていきます。これは歯周病菌が歯の土台をなしている歯槽骨をじわじわと溶かしてしまうためです。歯が不安定になることで歯ならびが乱れ、歯間に隙間が生じやすくなります。
すきっ歯がもたらす影響やリスク
すきっ歯には見た目の問題以外にも様々なリスクがあります。
●発音の不明瞭化
すきっ歯の場合、サ行やタ行などで発音がしにくくなると言われています。調音の際に留まるべきところで空気が留まらず、歯の隙間から漏れてしまうためです。
●虫歯や歯周病リスク
歯と歯の間に隙間があると食べ物が詰まりやすくなり、歯磨きもしにくくなります。意識して丁寧に磨かなければ虫歯リスクや歯周病リスクを高めてしまいます。
●消化器官への負担
歯と歯の間に隙間があると無意識にそこで噛むことを避けるようになり、噛む回数が少なくなりやすいと言われています。胃腸への負担や栄養吸収の面でマイナスに働きます。
●頭痛や肩こりなど…
すきっ歯だと噛み合わせも良くないケースが多く、噛んだ際の力の分散がうまくいかない傾向があります。不必要な力が顎周りの筋肉の硬直や血流の悪化をもたらし、これが頭痛や肩こりに繋がることもあります。
発音上の問題や不正な噛み合わせによって体に不調が出ることもありますので、早めに治すことをご検討ください。
補綴矯正(ほてつきょうせい)
歯を動かすのではなく、補綴物と呼ばれる被せ物によって歯の隙間を埋めていく治療法です。物理的に歯を動かす必要がないため、矯正治療よりも短期間で治療が完了します。
●セラミック矯正(ラミネートベニア法)
歯の表面を0.2mm~0.5mm程度薄く削り、その上にセラミックでできた板(ベニア)を貼り付けて歯並びを矯正するものです。歯の色味を美しく整えられるメリットもあります。
●ダイレクトボンディング法
歯科用のプラスチックやレジンといった素材を直接歯の隙間に盛り付けて埋めていく治療法です。セラミック矯正と比較して歯を削る量を少なく抑えられますので、歯の寿命という点でも不安は少なくなります。
●クラウンによる補綴
特に奥歯など、既に被せ物のある箇所において隙間ができているような場合、被せ物を再調整したり差し歯によって隙間を埋める方法もあります。被せ物の素材は様々なものがありますので、お好みのものを選択できます。
まとめ
当コラムでは「すきっ歯」の原因やリスクに加え、歯列矯正などの治療法についてご紹介いたしました。すきっ歯は見た目の印象に悪影響があるだけでなく、お食事の際の噛む機能や生涯的な虫歯リスクなどにも繋がります。
「治しやすい不正歯列」という点で、すきっ歯は他の不正歯列に比べて優位性がありますので、ぜひ前向きに矯正治療をお考えいただきたいと思います。皆さまのご相談をお待ちしています。