2020.3.2 予防歯科
歯周病を正しく理解し予防する!ケアの方法まとめ
日本人の国民病とさえ言われている「歯周病」は、どのような経緯で発生してしまうものなのでしょうか。歯周病の原因や発生プロセスをわかりやすくご紹介し、歯周病になりにくくするための習慣作りをご案内します。「私はしっかり歯磨きできているから大丈夫!」と思っている方も、ぜひ当コラムをご一読いただき予防習慣を強化してください。
歯周病とは?
歯周病とは、「歯肉炎」と「歯周炎」を総称した呼び名です。歯茎の中の炎症のみでおさまっているものが「歯肉炎」であり、歯を支える歯槽骨にまで炎症が及んで骨を溶かし始めているものが「歯周炎」です。
歯周病の専門的な区分け
● 歯肉炎
細菌による炎症が歯茎の中だけにとどまっているもの
● 歯周炎
細菌による炎症が歯を支える歯槽骨にまで及び、骨を溶かし始めているもの
近年では、広く「歯周病」と言われるのが一般的です。細かく名称を分けるよりも「歯周病」の全体像を理解していただき、広く予防意識を持ってもらうことの方が大切だと考えられるようになってきたからです。そのくらい歯周病は「あなどれない病」であり、私たちの「未来の食生活」に脅威となるものです。
日本人成人の約8割もの人が何かしらの「歯周病」に罹っていると言われていますので、歯や歯茎の予防意識を普段から身に着けることが大切です。
歯周病の原因とプロセス
歯周病の根本的な原因は、歯と歯茎の溝(=歯周ポケット)に溜まった汚れや歯垢です。食べカスなどが歯茎の間に入り込むと、そこに細菌が繁殖しやすくなり、少しずつ「歯石」が作られていきます。都度適切なブラッシングで歯垢を除去できていれば良いのですが、どなたにも「磨き癖」のようなものがあり、歯並びの悪い箇所などでは特に「磨き残し」が発生しやすくなります。
歯周病が定着してしまう流れは次のようなものになりますので、ここでしっかりと整理しておきましょう。
歯周病が育っていくプロセス
1. 食べカスなどが歯と歯茎の間の溝(歯周ポケット)に入り込む
2. 歯磨きの癖や歯並びなどの影響で、歯と歯茎の間で「磨き残し」が発生する
3. 歯茎の中で細菌が繁殖し、日々の食べカスや糖分などをエサにして「歯石」を形成していく
4. 歯石が更なる磨き残しを助長し、じわじわと「歯周ポケット」が深くなる
5. 歯周ポケットにある歯石周辺に歯周病菌が増殖してしまい、やがて歯を支える骨まで溶かし始める
このように見ると、普段のご家庭でのお手入れがとても大切だとわかります。と同時に、「歯ブラシでは取り切れない汚れ」が歯周病を育ててしまう可能性があることも理解しておく必要があります。
歯ブラシで取れる汚れと取れない汚れ
口にした食べ物や飲み物は、歯や歯茎の汚れにならないようにお口の中を動き回ってくれるわけではありません。むしろ、加えられた力や元々ある溝や隙間などの影響を受けて、隅っこの方に残りやすくなる傾向があります(部屋に溜まる埃やゴミと同じです)。
この関係でどなたにも「歯ブラシで対処できる汚れ(歯垢=プラーク)」と「歯ブラシでは対応できない汚れ(歯石)」が出てきます。歯周病にならないためには、ご家庭でのブラッシング精度をあげていただくことと、その上で「取り切れない汚れ(歯石)を歯医者さんで除去してもらう!」という意識を持っていただくことが重要になるのです。
歯周病にならないためのケア方法!
歯周病を予防するためには、「ご家庭でのセルフケア」と「歯医者さんでのプロフェッショナルケア」の両方を確立することが大切です。
ご家庭でのセルフケア(歯磨きで大切なこと)
歯磨きで大切なのは、「歯と歯の隙間」や「歯と歯茎の溝」を注意深く磨くことです。食べカスは歯の表面ではなく、これらの箇所に留まる傾向があるため、ここを重点的にケアすることが歯周病を防ぐためにはとても大切なのです。簡単に歯磨きのコツやポイントをご紹介しておきますので、ぜひ参考になさってください。
歯磨き(セルフケア)で意識しておきたいこと
● 食べカスなどが残りやすい「歯と歯の隙間」や「歯茎の溝」を意識して磨く
● 歯に対して45度の角度で歯ブラシを当て、歯周ポケットにブラシが入り込むよう意識する
● 歯磨き中はできるだけ鏡を見るようにし、1本1本の歯の根元にブラシをしっかりと当てる
● 歯の隙間が多い場合については、デンタルフロスや歯間ブラシを併用する
(この場合は先にこれらを使い、その後に歯ブラシをすると効果的である)
● 「電動歯ブラシ」は手動の歯ブラシよりも力を加えやすいため、積極的に活用すると良い
歯医者さんの手によるプロフェッショナルケア(定期検診)
歯医者さんでの定期検診では、「虫歯や歯周病の確認」だけでなく、PMTC(プロフェッショナル・メカニカル・トゥース・クリーニング)と呼ばれる歯のクリーニングを受けることが可能です。こちらは、虫歯や歯周病になる前の「予防」を司る部分です。
歯のクリーニングで実施されること
● セルフケアで見逃されている「歯垢(プラーク)」や「強固な歯垢の塊(バイオフィルム)」を取り除く
● 歯の根元部分に隠れている「歯石」をスケーラーなどの専門器具で丁寧に除去する
● エアーフローなどを使って「歯の着色汚れ」を落とす
(ホワイトニングほどではないものの、ある程度歯の白さを回復できます)
上記以外にも、歯周ポケットの深さを測って歯周病リスクを調べたり、個別に歯磨き方法などのアドバイスを受けることも可能です。このようなことから、歯医者さんに通う習慣を持っているだけで生涯の虫歯や歯周病発生リスクは大幅に変わります。
まとめ
当コラムでは、歯周病の原因や進行プロセス、また予防法としての「セルフケア」や「プロフェッショナルケア」についてご紹介しました。普段からこれらのポイントを押さえてケアしておくと、歯周病になって歯が抜け落ちてしまうといった事態は避けやすくなります。
歯医者さんは、歯やお口の中のトラブルを治療する場所ですが、トラブルになりにくくするようなケアをさせていただく場所でもあります。当院でも随時「定期検診」を実施していますので、どうぞお気軽にご活用ください。