2020.2.14 虫歯
虫歯にならないために普段の生活で気をつけること
日常生活で甘いものを口にすることが多い方は虫歯になる確率が高いと言えます。そのほかにも、歯の磨き方などによっても虫歯リスクは変化します。そもそも虫歯とはどういうプロセスによって生じるものなのか、このあたりを整理しながら、虫歯になりにくいお口環境を作る術をご紹介します。
虫歯はどうやってできるの?
お食事をした後、食べカスが適切に除去されないと、そこにミュータンス菌やラクトバチラス菌などの細菌が集結して歯垢(プラーク)を形成します。プラークとは食べカスそのものではなく、それによって増殖する細菌の塊のことです。歯垢(プラーク)1mgの中には2億から3億程度の細菌が生息していると言われており、これらの細菌が口腔内の糖分を取り込んで「乳酸」を産出すると、お口の中が酸性に傾いていきます。
細菌が出した乳酸によって、歯の組織が溶解する
歯の表面はエナメル質で覆われており、その大部分はカルシウムイオンやリン酸イオン、水素基イオンなどで構成される「ハイドロキシアパタイト」と呼ばれる結晶によってできています。このハイドロキシアパタイトの結晶は「酸に弱い」という性質があるため、口腔内に乳酸が増えてしまうと、歯の成分が溶解し始める「脱灰(だっかい)」と呼ばれる現象が起こりやすくなってしまいます。
虫歯とは、このように食べカスなどを発端としてお口の中に細菌が繁殖し、乳酸が作られて口腔内が酸性に傾いた結果、歯の組織の溶解が過度に起こってしまって生じるトラブルのことを指します。初期段階で治療を施せば歯の欠損なども最小限に留められますが、痛み始めているのに放置していると、神経を除去する必要が生じたり、場合により抜歯せざるをえなくなるケースもあります。
日常生活で気を付けたいポイント
虫歯を作らないために、日常生活で気を付けるポイントはずばり3つです。いつまでも健康な歯を維持するためにぜひ確認しておきましょう。
1.ブラッシングのあり方で細菌の数は大きく変化する!
食べカスや歯垢を除去するためには、食後の歯磨きが必須です。ただし、ブラッシングだけで完璧に歯垢を除去することは不可能に近く、人によってはあまり適切でないブラッシングが習慣化しているケースもあります。
歯茎の間に45度の角度でブラシの毛先を当てるのが基本
歯磨きでは、歯の表面というよりも「歯と歯茎の境目」を中心に45度の角度でブラッシングすることが大切です。この概念が幼いころから身についている場合は良いのですが、患者さまによっては「歯磨き=歯の表面を美しく磨くこと」だと誤解してしまっているケースもあり、この磨き方が定着してしまっている場合、そうでない方と比べかなり歯垢が残りやすい状態になってしまいます。虫歯を作りにくくするために、ぜひもう一度ご自身のブラッシング習慣を見直してみてください。
歯間ブラシや電動歯ブラシもおススメ!
歯ブラシだけのブラッシングでは、どうしても歯と歯の間に食べカスが残りやすくなってしまいます。特にある程度年齢を重ねて歯に隙間が増えてくると、そこに毎回食べカスが残り、歯垢が定着して虫歯に発展してしまうケースが少なくありません。歯に隙間がない場合には無理に「歯間ブラシ」を通す必要はありませんが、元々歯並びが悪かったり、隙間があることを認識しておられる患者さまの場合には、積極的に「歯間ブラシ」をご活用ください。
また、「電動歯ブラシ」は手動によるブラッシングの何倍も効率的に歯垢を除去する能力があります。こちらもうまく取り入れていただければと思います。
2.食べ物に気を付け、間食などを控える
虫歯の原因菌と言われるミュータンス菌は、糖分を摂りこんで乳酸を作り出します。これが歯を緩やかに溶かしていきますので、甘いものを控えていれば虫歯は起こりにくいと言えます。お食事の際の栄養素としては「炭水化物」が糖質に当たりますので、完全に糖を抜くことは不可能ですが、「おやつ」や「スイーツ」をたくさん口にしていると、その分虫歯リスクが上がります。
どうしてもおやつを食べてしまうという場合は、だらだらと食べて口腔内に糖分のある状態が長くならないよう心がけ、外出先であっても水やお茶などをうまく含みながら歯の表面への糖分付着を極力抑えるように心がけましょう。できれば、カフェなどでスイーツを口にした場合もその後軽くブラッシングしておく方が良いです。
3.歯質そのものの化学的な強化
上述したように、歯のエナメル質を構成している「ハイドロキシアパタイト」は酸に弱く壊れやすい性質があります。このため、お口の中に細菌が増殖して口腔内に乳酸が増えないようにしなければならないのですが、着眼点を変えて、酸に弱い歯の構造自体を強化してやる方法もお子さまなどの虫歯予防の一環で耳にしたことがあるかもしれませんが、歯医者さんでは高濃度の「フッ化物」を歯に塗布するという予防法があります。
これをしてあげると、エナメル質を構成している「ハイドロキシアパタイト」と呼ばれる結晶は、酸に対しても強い「フルオロアパタイト」と呼ばれる結晶へと変化します。
また、口腔内にフッ化物が広がれば、「脱灰」によって溶け出してしまったカルシウムやリン酸などが再び歯に再吸収されていく「再石灰化」も促進されやすくなります。歯を溶解から守ることができ、虫歯リスクを抑制できます。フッ化物の塗布は成人の場合にも可能ですので、ご希望があればご相談ください。
まとめ
当コラムでは、虫歯にならないために日常生活で気を付けていただきたいポイントをご紹介しました。冒頭でご案内した「虫歯のできるプロセス」を押さえておけば、ブラッシングや食生活など、気を付けるポイントは自ずと見えてきますよね。 ぜひ当コラムでご紹介した内容を忘れずにインプットしていただき、虫歯のできにくい健康なお口環境をお作りください。