前歯の気になる箇所だけを矯正する場合、部分矯正（プチ矯正）という治療法が選択されるケースがあります。歯の全体的な矯正と比べて費用や治療期間が抑えられる反面、すべての患者さまが選択できるわけではないという一面もあります。部分矯正に向いている人はどのような人なのか、また全体矯正と比べてどのような違いがあるのか、当コラムでご確認ください。
目次
部分矯正とは？
部分矯正とは、たとえば「前歯の気になる箇所だけ…」といった部分的な不正歯列を整える治療のことを言います。
ほとんどの場合、見た目の改善が第一次的ですが、治療としては噛み合わせも含めて適切な咬合調整を狙うものと言えます。 基本的な内容として、全体矯正と比較すると次のような特徴があります。
| 部分矯正 | 全体矯正 | |
|---|---|---|
| 費用 |
相対的に安価 （15万円〜60万円くらいまで） |
相対的に高額 （60万円～150万円くらいまで） |
| 治療期間 | 短い（半年～2年まで） | 長い（2年～3年程度） |
| 違和感や痛み | 矯正装置の装着範囲が狭いため、強い違和感や痛みを感じにくい | 矯正装置の範囲に比例して違和感や痛みを感じやすい |
| 手入れのしやすさ | 範囲が少なくお手入れも楽 | 範囲が広く日常的なお手入れが面倒 |
| 仕上がりの美しさ | 精密な美しさまでは追求しにくい | よりキレイな仕上がりが期待できる |
| 噛み合わせの精度 | 噛み合わせが良くなるとは限らない （機能性の調整には限界がある） |
噛み合わせが確実に向上する （高精度に咀嚼機能を調整できる） |
最も大きなポイントは、部分矯正の場合には治療期間と治療費用の負担が相対的に低く抑えられるという点です。費用については幅がありますが、これは元々の歯並びの状態や選択する矯正器具によって変化するとお考えください。
部分矯正の種類
部分矯正も全体矯正と同じように、いくつかの種類がございます。一般的な金属ワイヤーを装着する「ブラケット矯正」のほか、近年では目立たないブラケットやマウスピース矯正なども増えてまいりました。
部分矯正の種類と費用目安
● ブラケット矯正（15～40万円程度）
金属のワイヤーを装着して少しずつ歯を動かしていく治療法です。
（目立たない色味のブラケットを選択することもできます）
● 裏側ブラケット矯正（40～60万円程度）
ブラケット矯正の中でも金属のワイヤーや金具を歯の裏側に装着するものです。 言われなければほとんどわからない反面、舌が当たって違和感を感じやすかったり、治療費が高額になる特徴があります。
● マウスピース矯正（30～40万円程度）
半透明のマウスピースを使用し、マウスピースの型を徐々に変えていくことで少しずつ歯を動かしていくというものです。金属のワイヤーなどがないため不快感を感じにくく、見た目にも違和感が少ないというメリットがあります。
着脱可能なためお手入れも楽ですが、その分しっかりと装着時間を自己管理できないと治療効果が見込めないというウィークポイントもあります。
● インプラント矯正（20～45万円程度）
容易に動かせないくらいの不正歯列の際に、アンカースクリューを顎骨に一時的に埋め込み、そこにワイヤーを固定して大きく歯を動かすような矯正法です。
歯が動くまでの時間を短縮しやすくなり、非抜歯矯正を実現しやすくなるなどのメリットがあります。前歯であっても不正歯列が酷い場合には選択肢に入ってきます。
ご覧の通り、目立たないものを選択するほど費用面では高額になります。部分矯正の場合、期間的に長くても2年程度ですし、元の歯並びの状態次第では半年程度で済むケースもございます。
短期間で可能だと診断された場合は、多少見た目の違和感を我慢して費用面を抑えるなどの工夫をなさると良いでしょう。
部分矯正はこんな人におススメ
部分矯正の特徴を知れば、部分矯正に向いている人が見えてきます。具体的には次のような患者さまが部分矯正におススメです。
「とにかくここだけ！」と気になっている患者さま
一般的に部分矯正では「前歯だけ」を選択されるケースが多いですが、もちろん奥歯のこの箇所だけという選択も可能です。最も多いのが「少し凸凹した状態の下前歯」を直すもので、これ以外にも「すきっ歯」や「八重歯」などの需要も高いです。
「出っ歯」なども程度によっては部分矯正で対応できるケースがありますので気になる場合はご相談ください。
前歯のすきっ歯は最も簡単に矯正可能！
歯列矯正では空間を確保して重なった歯を整列させるよりも、隙間ができている歯の間を狭める処置の方が容易です。「空隙歯列（くうげきしれつ）」と呼ばれる「すきっ歯」の中でも、「正中離開（せいちゅうりかい）」という前歯の中心に隙間ができているケースであればかなり簡単に矯正できます。
このような不正歯列の場合、発音が不明瞭になる傾向もございますので、積極的に部分矯正をご活用いただきたいと思います。
「結婚式の披露宴までに…」など早く治療を終えたい患者さま
一般的に矯正治療では長い時間を要することが知られていますが、既にご紹介したように状態が酷くなければ半年程度の「プチ矯正」で早期に歯並びを改善させることも可能です。
あまり部分矯正についてご存じない患者さまの場合、先入観で諦めてしまっている場合もあるかもしれませんが、思ったより簡単に調整できるケースもございます。
結婚式の披露宴などを想定し、この時期までに自然な笑顔を手にしたいという需要にもマッチしますので、気になっている場合はお気軽にお問い合わせください。
まとめ
当コラムでは、部分矯正の基本情報や特徴をご紹介しつつ、部分矯正に向いている人などを簡潔にご案内しました。実際のところ、部分矯正が実施できるかどうかは患者さまの歯並び次第という側面もございます。
一度診てみないと何とも言えないところがございますので、まずは当院にお越しいただき、どのような矯正治療が選択できるのかをご相談ください。 歯並びの改善によって自然な笑顔になれることは、心身共に大きなプラス作用があります。
歯並びが良くなって損をすることは何もございませんので、前向きに部分矯正をご検討いただけますと幸いです。