子供の歯並びが気になって歯医者さんを受診したら、床矯正を勧められるケースもあると思います。まだお子さまの顎骨が柔らかい時期の治療だと「これが普通なのかな?」と思うかもしれませんが、実際に床矯正装置で期待通りに歯並びを整えられるケースはそれほど多いとは言えません。現場では「床矯正装置」と「急速拡大装置」が併用されることも多く、何がどう違うのかといった点が保護者目線ではやや不明瞭だと思います。床矯正治療を迷っておられる方、こちらのコラムで「床矯正装置」と「急速拡大装置」の特徴や違いをご確認ください。
目次
床矯正(しょうきょうせい)とは?
床矯正とは、子供の歯並びを改善する際に用いられるもので、取り外し可能な「床矯正装置」を装着して顎の骨の成長を利用し、歯並びをキレイに改善するように促す治療法のことです。ポイントとして押さえておくべきは、「床矯正装置では顎骨そのものを動かせるわけではない…」という点です。
あくまでも「歯槽骨の適切な成長」をサポートするもの
私たちの歯は、歯槽骨(しそうこつ)と呼ばれる骨の上に食い込むような形で埋まっています。顎骨自体に歯が食い込んでいるわけではなく、顎骨のベースとなってくる骨の上に歯槽骨があり、そこにあるくぼみの中に歯の根っこ部分が埋まっているような状態です。
歯並びが悪い場合ですと、歯槽骨のくぼみ自体が内向きに倒れ込んでいるようなケースも少なくありません。これにつられて歯が垂直に向かないため歯並びが悪くなっていることもあり、このような場合に「床矯正装置」が有効になるのです。床矯正装置で歯槽骨の成長を適切な方向に促すと、歯の軸も適切な方向に向かい結果として歯並びが整いやすくなります。
床矯正で「顎骨を広げられる」と誤解されているケースもございますが、厳密なところでは顎骨が広がる範囲はかなり限定的で、どちらかと言うと「歯軸を適切に傾斜させるもの」になります。
このようなことから、床矯正装置で歯列を調整できる範囲はある程度限られてきます。本当に床矯正装置を利用するのが適切なのかは慎重に判断すべきです。もちろん、これは専門家でなければわからないことですので、いくつかの歯医者さんを回るセカンドオピニオンで対応されるのが良いでしょう。
一般的には「急速拡大装置」が併用される
床矯正装置のみでは顎骨までは動かせないため、より多くのスペースが必要な場合には「急速拡大装置」と呼ばれるものが併用されることが多いです。これは上顎に装着するもので、強い力で上顎自体を広げようとするものです。
はめ込む際に歯に強い力が加わるため、乳歯ではなく永久歯を介して顎骨を拡大していくことになります。この関係で、年齢的には小学校高学年くらいに行なうのが良いと考えられています。
下顎自体はほとんど動かせない点に注意!
上顎も下顎も「急速拡大装置」を使って広げることができるのであれば、上下ともに歯並びが悪い場合にうまくスペースを確保できることが想像できると思います。しかしながら、「急速拡大装置」は上顎にのみ用いることができるもので、下顎については広げることができません。
このため、「上顎が狭く小さい…」というお口環境の場合、急速拡大装置でうまくコントロールできるかもしれませんが、「上顎も下顎もどちらも小さい…」という場合に上顎だけ広げてしまうことは、上下の噛み合わせを悪くしてしまうリスクをもたらします。場合により、上顎に「急速拡大装置」、下顎に「床矯正装置」という組み合わせで歯列矯正をスタートされるケースもございますが、このパターンが本当にそのお子さまに合っているのかは注意深く判断していかなければなりません。
床矯正治療の適性を見極めるのは難しい…
当コラムでは、子供の歯列矯正で案内されることの多い「床矯正装置」や「急速拡大装置」に関する特徴をご紹介しました。ポイントとして次の点を押さえておきましょう。
床矯正装置と急速拡大装置のポイント
● 「床矯正装置」では顎骨自体を広げることは困難である
● 床矯正装置は、あくまでも「歯軸を適切に傾斜させること」に重きが置かれる
● 床矯正治療の現場では、多くの場合「急速拡大装置」も併用される
● 急速拡大装置は「上顎にのみ用いられるもの」で、下顎自体を広げることはできない
● 「床矯正装置」でも「急速拡大装置」でも下顎はほとんど広げられないため、無理に床矯正治療をするよ りも歯を少しずつ何本か削る矯正の方が良いケースもある
最後にリストアップした「治療の方針」については、担当の歯科医によって大きく考え方が異なります。特に下顎の成長が未熟な場合にはどの治療で行くべきか難しい判断になりますが、できるだけ評判の良い歯医者さんをお探しいただき、慎重な選択をなさってください。
当院でもお子さまの歯列矯正治療を実施しています。セカンドオピニオンとしてご相談いただくことも可能ですので、どうぞお気軽にご来院ください。