歯の噛み合わせは生まれ持った歯並びなどに影響するため、本人は自分の「噛み合わせの悪さ」に気付いていないケースも少なくありません。しかしながら、噛み合わせが悪いまま日常生活を過ごしていると、顎骨に必要以上の負荷がかかり、全身で不快な症状をもたらしてしまう可能性があります。噛み合わせの悪さは口腔環境だけでなく、身体全体にどのような影響を与えてしまうのか、当コラムでご確認ください。
目次
悪い噛み合わせは、顎関節への負担…全身で不快な症状にも…
噛み合わせの悪さは顎関節に大きな負担をかけるだけでなく、顎骨のズレを引き起こすこともあります。顎周辺の筋肉や関節は体の軸をなす背骨とも繋がっており、偏った噛み癖や顎骨のズレが首から上の筋肉や全身のバランスにじわじわと影響を与えていきます。
このようなことから、噛み合わせの悪さが原因となって「頭痛」や「肩こり」が引き起こされてしまうケースは少なくありません。また、体の傾きや歪みが慢性化してくると、背骨や腰、骨盤や股関節などにも影響が及び、全身に様々な形で不快な症状を呼び込んでしまいます。
噛み合わせの悪さが与えうる影響(症状)
● 歯の摩耗や破折
食生活で不必要に歯が擦れたり余分な力が加わるため、歯の摩耗や欠けなどが起こりやすくなる
● 顎関節症
噛み合わせの悪さが顎骨のズレをもたらし、口が開けづらい、噛むと顎周辺が痛むといった顎関節症を引き起こすこともある
● 歯ぎしり・喰いしばりなどの無意識運動(ブラキシズム)
噛み合わせの悪い人は咬合力のバランスが不安定なため、睡眠中に歯ぎしりをしたり、普段から無意識に喰いしばるといった癖を持ちやすくなる(また、これが更なる顎周辺の負担に繋がる)
● 頭痛や肩こり
顎関節への負担は肩や首から上の筋肉の動きに影響を与えやすく、不自然な硬直によって頭痛や肩こりの原因を作ってしまうことが少なくない
● その他、腰痛や全身の倦怠感など
顎関節への負担や歪みは背骨を経由して体全体に波及するため、全身で不可解な痛みや倦怠感をもたらすこともある
悪い噛み合わせはどうすべき?
噛み合わせの悪さはなかなか自分では意識できません。まずは、次の項目でご自身の「噛み合わせの悪さ」をチェックしていただき、その上でできる対策を考えてみましょう。
自分の噛み合わせの悪さをチェックしてみよう!
今現在のお口の中の状態や、普段何気なくやっている習慣などで「噛み合わせの程度」をある程度予想できます。次の内容をご確認いただき、当てはまる項目の数で「噛み合わせの悪さ」をチェックしてみてください。
「噛み合わせの悪さ」と関係の深い諸条件
- いつも同じ箇所(片側)で食べ物を噛む癖がある
- するめなど、たまに硬いものを噛むとすぐに顎が疲れる
- 虫歯を放置している箇所がある
- 部分的に歯が欠けていたり、抜けたままになっている箇所がある
- ふと気付くと、不必要に喰いしばっていることがある
- 歯ぎしりを家族や友人などに指摘されたことがある
- 朝起きたときなど、口を大きく開けにくかったり、口周辺に違和感を覚えることが多い
- 口を大きく開くと痛んだり、カクカクと妙な音がする
- 口角の位置やほうれい線のあり方が左右で明らかに非対称である
- 頭や肩が左右どちらかに傾いている
こちらの内容は、噛み合わせが悪いからこうなるというものもあれば、このような条件によって噛み合わせが悪化していくというものもあります。いずれにしても、上記の項目で当てはまるものが多い方は、噛み合わせを整えるよう意識された方が良いでしょう。
【今すぐできること】噛み癖を正し、左右のバランスを意識しよう!
「たかだが噛み合わせ…」と思っていても、実際には歯そのものの寿命を縮めてしまったり、全身に様々なデメリットが波及していきます。歯並びについては簡単には整いませんが、たとえば「噛み癖」については意識するだけでも調整していくことが可能です。「使わない筋力が低下する」のは自然の摂理ですので、左右両方の歯でしっかりと咀嚼する習慣をお作りください。
噛み癖の原因となっている口腔環境は早めに治療を!
噛み癖は、歯の部分的な欠損や虫歯、歯周病などを背景としてもたらされることも少なくありません。このため、お口の中のトラブルはできるだけ早く歯医者さんで治療し、取り込む必要のない「噛み癖」を習慣化してしまわないようにすることも大切です。
喰いしばりや歯ぎしりはマウスピースで対処
無意識に行なわれる喰いしばりや歯ぎしり習慣は、「ブラキシズム」とも言われており、既に見てきたように顎関節に弊害をもたらすものです。歯への直接的な負担にもなり、歯の寿命を縮めたり歯が欠けてしまうリスクを取り込んでしまいます。
歯科医院では、歯型を取ることで「ナイトガード」と呼ばれるマウスピースを制作して対応することが可能です。就寝時以外でも喰いしばりの癖がもたらす顎関節の負担を緩和することができますので、気になる患者さまは相談してみると良いでしょう。
噛み合わせを含め、定期検診で診てもらう習慣を!
これまで歯並びや噛み合わせに問題がなかった患者さまでも、年齢を重ねるごとに少しずつ噛み合わせが乱れてくることは珍しくありません。徐々にもたらされる変化であるためなかなか自分では気づきにくいものですが、歯医者さんでの「定期検診」を利用すれば、このような変化についても客観的な意見を仰ぐことができます。
定期検診では、虫歯や歯周病のチェックはもちろんのこと、歯のクリーニングや噛み合わせ調整などが可能です。普段から3~4ヶ月に一度くらいのペースで歯医者さんに通っていると、長く健康的な口腔環境を維持できます
まとめ
当コラムでは、噛み合わせの悪さがもたらす具体的な症状や、噛み合わせに関するセルフチェックリスト、また噛み合わせを悪化させないための対処法などをご紹介しました。治療について考えた場合、噛み合わせ調整は歯並びや顎骨の大きさなどにも依存することから非常に高度で繊細な技術を必要とします。
自分自身で対応することはまず不可能ですので、歯列矯正などで評判の良い歯医者さんに相談されると良いでしょう。当院でも、歯の治療だけでなく、噛み合わせ調整や歯列矯正なども承っております。お気軽にご相談ください。