2020.3.16 知識
歯の喪失を招く二大原因と注意しておきたいその他の習慣
70歳になったときに残っている歯の平均本数は、日本人の場合15本前後だと言われています。親知らずを除外した際の永久歯は28本ですので、15本前後の歯ではおいしく食事できないことが容易に想像できます。歯を失ってしまう理由は何なのか、日常的に気を付けたいポイントはどこにあるのかをご紹介します。
歯の喪失の二大原因 歯周病と虫歯で6割超え
出典:公益財団法人8020推進財団「第2回 永久歯の抜歯原因調査 報告書」
※「う蝕」とは、わかりやすく言うと虫歯のことを指しています。
2018年に公益財団法人8020推進財団が実施した「第2回 永久歯の抜歯原因調査」によると、歯を失うことになった原因の大部分は「歯周病」と「虫歯」です。調査結果のグラフを参照いただきますと、ご覧のように6割以上の抜歯の原因を「歯周病(37.1%)」と「虫歯(29.2%)」が担っていることがわかります。
また、グラフの中にある破折(17.8%)に至る多くは、虫歯治療の際に行なわれる「神経を取る処置」を発端としているとも考えられます。このため、この領域も含めて捉えると歯を失う理由の8割以上が虫歯か歯周病を経由しているという見方もできます。
「虫歯」を甘く見ていると抜歯を招く(29.2%)
お口の中の細菌がエサとなる糖質を取り込むことで酸を出し、これによって歯質が解けてしまう症状のことを広く「虫歯」と言っています。ある程度歯の溶解が進むと神経が空気に触れてしまうため痛みが発生します。この場合、神経を取ってできてしまった穴を塞ぐ処置を施しますが、治療が遅れた場合には歯の損失が大きくなるため抜歯せざるを得ないケースもあります。
また、治療によって穴を塞いだ場合にも数年後に同じ場所で虫歯が再発するケースもあり、この繰り返しによって歯の欠損領域が広くなり抜歯リスクが上がっていきます。原因は、「細菌の塊である歯垢(プラーク)をしっかりと除去できていない」という単純なものなのですが、磨き癖や不十分なブラッシング、おやつやスイーツの取りすぎなどを理由として虫歯が育ち、抜歯へとつながってしまうケースが少なくないのです。
「歯周病」は歯の喪失原因のトップ!(37.1%)
歯周病は、歯と歯茎の間にある溝(歯周ポケット)に細菌が入り込み、歯石を作り上げながら徐々に歯を支えている骨(歯槽骨)までも溶解してしまう病気です。なぜ治療が遅れるかと言うと、「初期段階では痛みを伴わないこと」と、歯周ポケットが深くなり歯石が築かれてしまった後では、丁寧にブラッシングしても細菌を除去しきれないためです。
どなたにも「磨き癖」や「磨き残し」がございますので、時間経過とともに歯の根っこ部分に「歯石」が付着してしまう確率は低くありません。この前段階では歯垢(プラーク)が塊となって強固なバイオフィルムを作り上げていきますので、数ヶ月単位で歯医者さんにお越しいただき「歯のクリーニング」を受けることが大切になります。虫歯についても、定期検診を利用していただければ早期発見が可能となり、歯を喪失してしまうようなリスクを最大限回避できます。
注意しておきたいその他の要因
歯を喪失してしまう理由の多くは上述したような「お口環境のトラブル」ですが、それ以外にも日常的に気をつけておきたいポイントがございます。
「不自然な癖」で歯に負担をかけていませんか?
何気ない癖の継続によって「歯の負担」が必要以上に大きくなってしまっているケースもございます。食事中に噛むことは非常に大切なことですが、お食事以外で不必要に負荷をかけてしまっては歯の寿命を縮めてしまう可能性があります。
気を付けたいポイントを簡単にご紹介しますので、ぜひ参考になさってください。
歯に負担をかけてしまう注意したい癖
● 喰いしばり
強く歯を喰いしばる回数が増えれば増えるほど歯を欠損させてしまうリスクが高まります。何か重いものを持ち上げるときなどは仕方ありませんが、不必要に歯を食いしばってしまう癖を持っている場合は要注意です。
● 噛ぎしり
寝ているときや何かを考えているとき「歯ぎしり」をする癖を持っている人は、歯への負担が大きくなり将来的に歯を失う確率が高くなってしまいます。
● 歯列接触癖
無意識に上下の歯を接触させてしまう癖を持っていると、歯への負荷が増し歯の寿命を短くさせてしまいます。お口の中の歯列間(前歯)は2mm前後の隙間があるのが普通ですので、不必要に歯と歯を接触させていないか少し意識してみてください。
歯を長持ちさせるために、生活習慣で気を付けたいこと
歯の寿命は平均的に50年から60年ほどと言われており、加齢に伴い歯質は衰え抜歯リスクもあがってしまいます。そのような限られた歯の寿命を少しでも延ばしたい場合は、食生活を中心として次のような点にも気を配りましょう。
気を付けたい食生活や生活習慣
● 栄養バランスへの配慮
バランスの取れたお食事は総合的な免疫力を高め、歯質を強化することに繋がります。
● 「柔らかいものばかり…」を避けた献立
噛む行為は唾液分泌を促し、お口の中を酸性に傾きにくくする効果があります。咀嚼回数が多くなる献立であれば、相対的に細菌が増えにくいお口環境になります。
● お菓子やスイーツを取りすぎない
歯を使う時間と歯を休める時間のメリハリを作ることが、歯質を修復する「再石灰化」を促します。このため、おやつやスイーツなどの「ダラダラ食い」が口腔環境に最も悪いものだと考えられています。
● 喫煙習慣
タバコは口臭を悪化させるという問題だけでなく、歯周病を進行させる傾向があります。できるだけ禁煙されることをおススメします。
まとめ
当コラムでは、抜歯に至る二大原因と、歯の寿命を短くしてしまう可能性のある生活習慣などについてご紹介しました。いつまでもおいしくお食事をしたいとお考えの場合、最も大切なのは「ご家庭での歯磨き習慣」と「歯医者さんでの定期的な歯科検診」です。
これらの二つを抑えていただき、その上で食生活などに気を付けていただければ歯の寿命は確実に延びていきます。当院でも随時「定期検診」を実施していますので、ぜひ積極的にご活用ください。